SEET法は、子宮内膜刺激胚移植法(Stimulation Endometrium Embryo Transfer)のことで、胚盤胞まで培養した培養液(SEET液)を子宮に注入することで、胚盤胞から分泌された因子が働き、子宮内膜を着床しやすい状態にすることで妊娠率向上を試みる方法です。
SEET法が何故有効かについて、しっかりとした科学的根拠はありませんが、培養液の中にある「何らかの物質」が着床を促進する可能性が考えられます。
採卵から5-6日目に培養液(SEET液)を凍結保存します。凍結融解移植を行う周期に、胚盤胞を移植する2〜3日前に、凍結していたSEET液を先に子宮に注入します。
SEET液の注入から2〜3日後に、凍結していた胚盤胞を融解して胚移植を行います。
新しい治療法であり、長期的予後は明らかではありません。
消毒して処置を行いますが、稀に子宮内・腹腔内の感染が起こることがあります。
若干の出血がみられることがありますが、一時的なものであり心配はありません。
スクラッチング法は、体外受精の妊娠率を上げるための方法のひとつです。胚移植が反復不成功の場合に、様々な方法が試みられていますが、その中でも簡便で安価な方法であり、最近世界中で広く行われるようになりました。
着床現象は炎症反応を伴うため、着床には子宮内に軽い炎症が生じることが必要と考えられています。
胚移植の数日前(保険移植では前周期)に子宮内に器具をそっと挿入することで、軽い炎症を惹起させる方法です。
スクラッチング法がなぜ有効か、いつ、どんな方法で行うのが最適なのかについて、明らかにされていません。
疼痛や、それに伴う迷走神経反射(いわゆる貧血、低血圧)などが起こる可能性があります。
消毒して処置を行いますが、稀に子宮内・腹腔内の感染が起こることがあります。
若干の出血がみられることがありますが、一時的なものであり心配はありません。
G-CSFは、顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte Colony Stimulating Factor)のことで、G-CSF子宮内注入は、体外受精の着床率を上げるために試みられている方法です。
子宮内膜が薄い方、あるいは良好胚移植にて妊娠に至らない方が本治療の対象になります。
着床現象は炎症反応を伴うため、子宮内の軽い炎症は好ましいことです。炎症性サイトカインであるG-CSFを子宮内に注入すると、軽い炎症を惹起させることができます。
本治療は、子宮内膜を厚くしたり、着床環境の改善効果があることが報告されています。
本胚移植の数日前にG-CSF(フィルグラスチム300μg)を子宮内に注入します。
消毒して処置を行いますが、稀に子宮内・腹腔内の感染が起こることがあります。
若干の出血がみられることがありますが、一時的なものであり心配はありません。
投与後に血液検査を行うと白血球の数値が高く出ることがあります。
健康診断や人間ドック等を受ける場合には投与から1週間程度経過してから受けることをおすすめします。
PFC-FD(自己血小板由来成分濃縮物)は、PRP(多血小板血漿)に含まれる「成長因子」のみを抽出・濃縮し凍結乾燥させたものです。
子宮内あるいは卵巣内に注入することによって、子宮内膜機能改善や卵巣機能改善が期待できます。
ご自身の血液から活性化させたPFC-FDを組成し活用するため、患者様ひとりひとりに合わせた治療法です。
約50mlの採血を行い、3週間後にPFC-FDが2本完成します。
子宮内注入:胚移植反復不成功の方、子宮内膜が薄い方に対してカテーテルを用いて子宮内に注入します。
卵巣内注入:採卵当日あるいはPFC-FDが出来次第外来内診室で卵巣内に針で注入します。
感染症がある場合、血小板が少ない方には作成することができません。
卵巣内注入:腹腔内出血、膣壁出血、感染、発熱、他臓器損傷の可能性があります。また、超音波にて卵巣位置が不明瞭な時には注入することができません。
PFC-FDは治療を受ける方の血液を使うため、アレルギー反応の心配はありません。
化学療法・放射線療法など医学的介入による卵巣機能低下を懸念する場合や、加齢による卵巣機能低下を懸念する場合に、卵子凍結を行うことが出来ます。
また、体外受精や顕微授精のために採卵したものの、何らかの理由により精子が得られなかった場合にも、緊急避難的に卵子凍結を行うことが出来ます。
凍結保存を行った卵子の生存率は80~90%程度となっています。
凍結卵子を用いた妊娠率は、不妊治療で行われている体外受精や顕微授精の胚移植と同等であるとされています。
採卵・卵子凍結法では以下の手順に従い一連の治療を行います。
1)採卵の際に良好な卵子を複数個採取するために、排卵誘発剤を用いた卵巣刺激を行います。
卵巣の反応は個々に異なるため、AMHその他ホルモン検査を参考に各自にあった刺激法を選択します。
通常、月経3日目より卵巣刺激を開始します。
2)複数回の超音波検査とホルモン検査により卵胞の発育状況を確認し、最適な採卵日を決定します。
採卵当時は禁飲食で来院していただき、超音波ガイド下に専用の採卵針で卵胞液を吸引し卵子を回収します。
3)採卵後、卵子裸化処置後に凍結します。
凍結保存デバイスに卵子を載せ、最後に液体窒素(-196℃)に投入します。
1)卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
排卵誘発剤の投与により卵胞が過剰に発育し、排卵(採卵)後に卵巣腫大、腹水貯留等による多彩な症状を呈する症候群をいいます。
AMHが高い方、排卵誘発剤を大量に必要とする方、35歳以下の方、やせ型の方などの場合にリスクが高いと考えられていますが、必ずしも当てはまらない場合もあります。
2)採卵に伴うリスク
出血(卵巣出血)、腹腔内出血、骨盤内感染、迷走神経反射、膀胱損傷、腸管損傷などが起こる可能性があります。
3)採卵の際の麻酔に伴うリスク
局所麻酔の場合:局所麻酔中毒、舌のしびれ、耳鳴りなど
静脈麻酔の場合:呼吸抑制や血圧低下、悪心・嘔吐、気分不良など
4)深部静脈血栓症、肺塞栓症
5)薬剤アレルギー
卵子裸化処理を行った卵子は自然に受精することができないため、顕微授精が必須となります。
顕微授精とは卵細胞質内精子注入法(ICSI)のことを指し、精子を顕微鏡で観察しながら成熟した卵子に細い針を刺して細胞質内に直接精子を注入する方法です。
精子凍結は、人工授精や体外受精の治療の一貫として行われます。もともと人工授精や体外受精は不妊治療として行われますが、癌などの治療による妊孕性(妊娠できる能力)の低下が予測される場合にも精子凍結を行うことが出来ます。
提出して頂いた精液、あるいは手術で採取した精巣内組織から精子を凍結保存できる出来る状態にし、-196℃の液体窒素タンク内で保管します。
凍結保存を行った精子の生存率は半数程度になることが一般的ですが、精子の状態が悪い場合には、凍結保存している精子が強いダメージを受ける場合があります。
凍結精子の場合は原則として顕微授精が必要になります。
受精が成立した場合、多くの場合は、凍結精子を用いた場合と新鮮精子を用いた場合の妊娠率はほぼ同等とされています。
人工授精の際に凍結精子を用いた場合、妊娠率は低くなります。
※各処置の費用に関しましては料金表をご参照下さい。